1.当四半期決算に関する定性的情報 ……………………………………………………………………………2
(1)経営成績に関する説明 ……………………………………………………………………………………2
(2)財政状態に関する説明 ……………………………………………………………………………………2
(3)業績予想などの将来予測情報に関する説明 ……………………………………………………………2
2.四半期財務諸表及び主な注記 …………………………………………………………………………………3
(1)四半期貸借対照表 …………………………………………………………………………………………3
(2)四半期損益計算書 …………………………………………………………………………………………5
(3)四半期財務諸表に関する注記事項 ………………………………………………………………………6
(継続企業の前提に関する注記) ……………………………………………………………………………6
(キャッシュ・フロー計算書に関する注記) ………………………………………………………………6
(株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記) ……………………………………………………6
(セグメント情報等) …………………………………………………………………………………………6
(収益認識関係) ………………………………………………………………………………………………6
(1株当たり情報) ……………………………………………………………………………………………7
(重要な後発事象) ……………………………………………………………………………………………7
3.補足情報 …………………………………………………………………………………………………………8
(1)研究開発活動 ………………………………………………………………………………………………8
1.当四半期決算に関する定性的情報
当第3四半期累計期間(2025年1月1日~2025年9月30日)における日本経済は、米国関税政策による不確実性が上昇した局面もありましたが、日米合意を踏まえて関税政策の影響は限定的にとどまる見込みであり、企業活動の底堅さも示されています。また、海外経済に関しては、イスラエル紛争の解決が示唆されるなどリスク要因の減少により、不安定な状況からの改善が期待されます。
このような状況下、当社は「未来のがん治療に新たな選択肢を与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、特に、腫瘍溶解ウイルスOBP-301を中心に研究・開発・ビジネス活動を推進させています。当社は、OBP-301の国内ビジネスを製薬会社モデルで展開することにより、従来のライセンス依存の単一の事業モデルから、製薬会社型とライセンス型の『ハイブリッド型事業モデル』へ移行していきます。
また、LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)は、Transposon Therapeutics, Inc.(以下「Transposon社」)とのライセンス契約の下、同社の全額費用負担により臨床試験が実施され、Transposon社のビジネス活動も進んでいます。
当社活動の詳細に関しては、「3.補足情報 (1) 研究開発活動」をご確認ください。
当第3四半期累計期間の業績は、売上高28,546千円(前年同四半期は売上高31,384千円)、営業損失1,571,067千円(前年同四半期は営業損失1,230,138千円)となりました。また、営業外収益として、受取利息3,348千円等を、営業外費用として支払利息3,803千円、譲渡制限付株式報酬償却6,098千円、新株予約権発行費7,177千円、株式交付費1,513千円、為替差損28,296千円等を計上した結果、経常損失1,614,576千円(前年同四半期は経常損失1,243,866千円)になりました。その結果、四半期純損失1,617,044千円(前年同四半期は四半期純損失1,246,692千円)となりました。
当第3四半期会計期間末における資産は、現金及び預金の減少等により2,188,416千円(前事業年度末比31.6%減)となりました。負債は、未払法人税等の減少等により417,560千円(前事業年度末比6.5%減)となりました。純資産は、四半期純損失等により1,770,855千円(前事業年度末比35.7%減)となりました。
当社の業績は、未だ安定した収入基盤は小さく、OBP-301の国内販売提携契約に伴うマイルストーン収入の有無や、Transposon社によるLINE-1阻害剤OBP-601の開発イベント達成や同社のIPOやM&Aなどのコーポレートアクションにより発生するマイルストーン収入の有無によって大きく変動します。
したがって、現時点では業績に与える未確定な要素が多いことから、業績予想につきましては適正かつ合理的な数値の算出が困難な状況と考えており、開示を控えさせていただきます。
2.四半期財務諸表及び主な注記
(1)四半期貸借対照表
(2)四半期損益計算書
第3四半期累計期間
該当事項はありません。
(キャッシュ・フロー計算書に関する注記)
当第3四半期累計期間に係る四半期キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません。なお、第3四半期累計期間に係る減価償却費は、次のとおりであります。
当社は、2025年3月27日開催の定時株主総会の決議に基づき、2025年5月31日付で減資の効力が発生し、資本金2,363,488千円、資本準備金2,694,489千円を減少させ、その他資本剰余金に振替えております。その上で、その他資本剰余金5,057,978千円を全額減少させ、繰越利益剰余金に振替え、欠損填補に充当しております。
また、2025年6月13日開催の取締役会決議に基づき、譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分を行い、当該株式の処分により、その他資本剰余金が62,763千円増加し、自己株式が126千円減少しました。
さらに、2025年8月4日付で第21回新株予約権が発行され、その行使による払込みにより、資本金及び資本準備金がそれぞれ270,645千円増加しました。
以上の結果、当第3四半期累計期間において資本金が2,092,842千円、資本剰余金が2,361,079千円減少し、当第3四半期累計期間末において資本金が3,015,317千円、資本剰余金が333,409千円となっております。
【セグメント情報】
Ⅰ 前第3四半期累計期間(自 2024年1月1日 至 2024年9月30日)
当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
Ⅱ 当第3四半期累計期間(自 2025年1月1日 至 2025年9月30日)
当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
(収益認識関係)
顧客との契約から生じる収益を分解した情報
(単位:千円)
(1株当たり情報)
1株当たり四半期純損失金額及び算定上の基礎は、以下のとおりであります。
(注) 潜在株式調整後1株当たり四半期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、1株当たり四半期純損失金額であるため記載しておりません。
(重要な後発事象)
新株予約権の行使による増資
2025年10月1日以降、2025年10月31日までの間に、第21回新株予約権の一部について以下のとおり権利行使が行われております。
(注)1.(4)増加した資本金の額及び(5)増加した資本準備金の額には、新株予約権の振替額5,010千円がそれぞれ含まれております。
2.上記の新株予約権の行使による新株の発行の結果、2025年10月31日現在の発行済株式総数は26,955,900株、資本金は3,368,430千円、資本準備金は623,759千円となっております。
3.補足情報
(1)研究開発活動
当社の当第3四半期累計期間における創薬事業の研究開発費は、1,184,237千円となりました。なお、当第3四半期累計期間における研究開発活動の状況は以下の通りです。
1) 研究開発体制について
2025年9月30日現在、研究開発部門は25名在籍しており、これは総従業員数の59.5%に当たります。
2) 研究開発並びにビジネス活動について
当社は、OBP-301の国内ビジネスを製薬会社モデルで展開させ、従来のライセンス依存の単一の事業モデルから、製薬会社型とライセンス型の『ハイブリッド型事業モデル』へ移行しています。当社は同方針の下に、研究開発並びにビジネス活動を進めました。
①腫瘍溶解ウイルスOBP-301に関する活動
当社は日本国内でOBP-301の「放射線併用による食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)」を完了させ、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」)とOBP-301の承認申請に向けた先駆け総合評価相談を進めています。今後、OBP-301は承認申請可能であるとPMDAが判断した書類である「申請確認文書」を、「臨床」・「非臨床」・「品質」・「GCTP」・「信頼性」のそれぞれの区分で受領する見込みです。当社は計画通り、2025年12月期第4四半期にOBP-301を食道がん治療再生医療等製品として承認申請する予定です。また、2025年9月には、OBP-301の希少疾病用再生医療等製品(以下、「オーファン」)の指定に関する申請を行い、2025年12月期第4四半期にオーファン指定が受けられることを想定しています。
国内ビジネス面では、2024年2月に富士フイルム富山化学株式会社(以下、「富士フイルム富山化学」)とOBP-301の販売提携契約を締結し、製造元のヘノジェン社から国内でOBP-301の保管などを担う三井倉庫ホールディングス株式会社(以下、「三井倉庫HD」)を経て、医療機関に至るサプライチェーンの整備を進めています。三井倉庫HDとは2025年9月に品質協定書を締結しました。2025年10月には、新薬承認に向けたGMP製剤製造をヘノジェン社で開始しています。また、2025年4月に再生医療等製品製造販売業者の業許可を取得しました。さらに、2025年4月に、腫瘍溶解アデノウイルスの内視鏡投与に関する特許を日本で成立させました。同特許は、OBP-301に限らずOBP-702や他社の腫瘍溶解アデノウイルスも対象であり、2040年5月まで特許が存続します。
一方、米国ではOBP-301とペムブロリズマブの共同開発体制を構築するために、当社とコーネル大学、並びにコーネル大学とMSD社の間で、2023年12月にそれぞれ医師主導治験契約を締結しました。同契約に基づき、当社とMSD社は、胃がんの2次治療患者を対象としたPhase2医師主導治験の研究開発費を折半して、本臨床試験を進めています。
また、米国の権威あるがん研究組織NRGオンコロジーグループにより進められた放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験は、2025年1月のASCO- GI(米国臨床腫瘍学会 消化器がんシンポジウム)において、評価対象の13例全例で投与箇所の腫瘍の消失が確認されたことが発表されました。2025年末までに治験の1年生存率の結果が確認できる見込みです。
海外でのビジネス展開に関しては、2024年12月には台湾のMedigen社と台湾での販売権に関するライセンス契約を締結しました。Medigen 社により台湾で上市された後には、当社は Medigen 社へ OBP-301 の最終製品を有償で供給し、併せて Medigen 社から販売額に応じたロイヤリティ収入を得ることになります。
OBP-301は、承認申請準備中や組入れが終了した臨床試験も含めて、以下の3つの臨床試験が国内外で進んでいます。
i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)
ii) 抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
iii) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験
i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)
i-a) 研究開発活動
本試験は2019年4月の「先駆け審査制度」の指定に基づき全国17ヶ所の治験が行われ、2024年10月に開催された第62回日本癌治療学会学術集会(福岡)において、以下の試験結果が発表されました。
有効性
主要評価項目である「局所完全奏効率」(L-CR率)は、内視鏡中央判定委員会の評価により41.7%(小数点以下第2位四捨五入。以下同様。)と示されました。この結果は、事前に試験計画書に示された有効性閾値30.2%を上回る結果であることが確認されました。また、副次的評価項目として規定された「局所著効率」(L-RR率。原発巣は完全に消失しなかったものの、著明に縮小が認められた症例)は16.7%を示し、このL-RRを含めた「局所奏効率」([L-CR+L-RR]率)は58.3%を示しました。
本試験でのデータカットオフ時点での1年生存率は71.4%となり、「食道学会全国登録データ」による放射線単独治療での1年生存率57.4%を上回る成績でした。
さらに、本試験における最長追跡期間である18ヶ月時点の局所奏効率は63.9%となり、そのうち局所完全奏功率は50.0%となりました。また、18ヶ月時点での全生存率は53%でしたが、がんに関連した生存率は70%であり、局所奏功例におけるがん関連生存率は90%となりました。また、食道がん患者のQoL(Quality of Life)評価指標である嚥下障害は、有症状患者の71%に改善が認められました。これらの結果から、OBP-301による食道がん局所への効果が患者の生存率を高めた可能性が示唆されました。
なお、2025年7月にスペインで開催されたESMO-GI 2025(欧州臨床腫瘍学会 消化器がん総会)では、国立がん研究センター中央病院 加藤健先生などの調査として、「国内12施設で2014年~2023年に、放射線治療だけを行ったステージⅡ/Ⅲの食道がん患者のL-CR率は22%であった」と報告されています。
安全性
OBP-301と関連性のある主な副作用は、発熱が51.4%、リンパ球数減少又はリンパ球減少症が48.6%に認められましたが、これらは軽度ないしは中等度、又は一過性の変化でした。
i-b) ビジネス活動
OBP-301の安定供給のために重要なサプライチェーンは、「ベルギーで製造して富士フイルム富山化学へ出荷」の前工程と、「富士フイルム富山化学による医療機関への販売」の後工程に分かれます。当社は各パートナーとともに、OBP-301のサプライチェーンの整備に努めています。また、OBP-301の販売に必要な再生医療等製品製造販売業者の業許可を、2025年4月に取得しました。
ベルギーで製造して富士フイルム富山化学へ出荷
国内承認取得後にOBP-301を円滑に供給するために、ヘノジェン社で2025年10月にウイルスの凝集体を抑制する新処方によって、原薬をバイアルへ充填して製剤化を実施しました。2025年8月には、新処方で製剤化後12ヶ月間の安定性を得たことを確認しています。さらに、2026年12月期上半期には18ヶ月間の安定性データを確認する計画です。
包装・保管及び輸送の物流業務を委託している三井倉庫HDは、再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準である GCTP(Good Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practice)に適合した体制を整備しました。ヘノジェン社から出荷された製品は、輸入後に日本国内の三井倉庫HDで保管されます。また、輸入後にOBP-301の出荷試験を委託するユーロフィン分析科学研究所(京都市)で、OBP-301の出荷試験の準備を進めています。製造販売業者となる当社が実施する出荷判定をクリアしたOBP-301は、販売提携先の富士フイルム富山化学へ出荷されます。
富士フイルム富山化学による医療機関への販売
当社は、出荷可能と判定したOBP-301を国内で効率的に医療現場へ届けるために、富士フイルム富山化学と2024年2月に販売提携契約を締結しました。OBP-301は、出荷判定後に当社から富士フイルム富山化学へ出荷され、富士フイルム富山化学が指定した医薬品卸会社を通じて医療現場に提供されます。今後も、上市後のOBP-301の円滑な供給のために、サプライチェーンの整備などを進めていきます。
再生医療等製品製造販売業
当社は、日本国内へのOBP-301の出荷に責任を負う製造販売業者に位置付けられます。当社は、2025年4月に再生医療等製品製造販売業者の業許可を取得しました。今後も、「GQP(Good Quality Practice:品質管理の基準)」及び「GVP(Good Vigilance Practice: 製造販売後安全管理の基準)」に適合した体制をさらに強化していきます。
ii) 抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
上記ii)の「抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学が当社の事前合意を得た上で、MSD社へ新たな治験の実施や治験費用の負担を提案し、2023年12月に当社とコーネル大学の契約、コーネル大学とMSD社の契約が締結され、共同開発体制を構築しました。
本治験は、抗PD-1/PD-L1抗体を含む1次治療に抵抗性のある胃がん・胃食道接合部がん患者を対象に、2次治療としてOBP-301と抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用します。現在、当社とMSD社で費用を折半して投与が進んでいます。MSD社のペムブロリズマブは2023年に全世界で250億ドル以上売り上げるなど、抗PD-1/PD-L1抗体は大手製薬会社の経営に大きな影響を与えています。抗PD-1/PD-L1抗体を販売する大手製薬会社にとって、このOBP-301を併用した胃がんの2次治療が確立された場合には、抗PD-1/PD-L1抗体の処方機会が拡大する可能性があります。当社は本治験の結果が、OBP-301の海外でのライセンス活動に貢献するものと期待しています。
iii) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験
上記iii)の「放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験」は、米国の権威あるがん研究組織NRGオンコロジーグループにより、OBP-301と放射線化学療法を併用した際の安全性と有効性の検討を目的として2021年12月から開始され、15例の患者を登録しました。2025年1月に開催されたASCO- GI(米国臨床腫瘍学会 消化器がんシンポジウム)で、有効性の評価対象となる13例全例で、投与箇所での腫瘍の消失が内視鏡所見や病理生検などで確認されたことが発表されました。本治験の1年生存率の結果は、2025年末までに確認できる見込みです。
OBP-301は米国において食道がんのオーファンドラッグ指定を受けており、同指定の下、本治験は実施されています。そのため、補助金の支給や臨床研究費用の税額控除の優遇を受けることができ、さらに、米国においてOBP-301承認後の先発権保護が与えられ、その期間中は市場独占権が得られることになっています。
なお、当社は上記の3つの臨床試験に加えて、新たな領域でのOBP-301の臨床試験の開始に向けた準備を進めています。
②LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)に関する活動
2006年にYale大学から導入したOBP-601は、2010年から2014年にかけてBristol-Myers Squibb Co.(以下「BMS社」)へライセンスし、抗HIV薬としてBMS社によりPhase2b臨床試験が実施され、OBP-601の既存薬との非劣性が示されました。また、BMS社によって、OBP-601の長期毒性試験、がん原性試験や多くの臨床データが得られましたが、BMS社が戦略変更によりHIV領域から撤退したため、ライセンス契約は終了しました。その後、ブラウン大学(米国)の研究成果から、HIVの核酸系逆転写酵素阻害剤(以下「NRTI」)がレトロトランスポゾンの異所性発現を抑制することが示唆されました。その後の研究により、同作用を持つOBP-601が他のNRTIと比べて脳内移行性が高く、またLINE-1という逆転写酵素を強力に阻害してレトロトランスポゾンの産生を強力に抑制するという特長が確認されました。
このメカニズムに着目してOBP-601を神経難病治療薬へ応用しようと計画していたトランスポゾン社との間で、当社は2020年6月に全世界を対象とした総額3億ドル超のライセンス契約を締結し、同年11月にトランスポゾン社は第1回マイルストーンを達成しています。
トランスポゾン社は、「進行性核上性麻痺(PSP: Progressive Supranuclear Palsy)」とC9 ORFという酵素の異常発現を伴った「筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)及び前頭側頭型認知症(FTD: Frontotemporal Degeneration)」を対象としたプラセボを用いた二重盲検法による2つのPhase2臨床試験を完了し、次相の臨床試験の準備を進めています。また、トランスポゾン社は、OBP-601が炎症性神経損傷を抑制したバイオマーカーの結果などから、アルツハイマー病を対象とした新たな臨床試験を開始する準備を進めています。なお、アイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS: Aicardi-Goutieres Syndrome)を対象にした欧州での単群のPhase2臨床試験の優先順位を引き下げました。
これらのOBP-601に関する臨床試験は、ライセンス契約に基づき全額トランスポゾン社の費用負担で進められています。また、同ライセンス契約に基づき、トランスポゾン社はビジネス活動を行い、第三者である製薬会社などにOBP-601のライセンスを再許諾(サブライセンス)することが可能となっています。サブライセンスが成功した場合には、トランスポゾン社がサブライセンス先から得た収入の一定割合が当社へ支払われます。
i) PSP Phase3臨床試験
PSPを対象としたPhase2臨床試験は2021年11月に1例目への投与が開始され、2022年8月に目標症例数の組入れが完了しました。トランスポゾン社が、2024年3月に第18回 国際アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD2024)で発表した主な内容は下記の通りです。
① PSP患者42例がこの試験に組み込まれました。
② 二重盲検試験として実施され、1日100㎎投与群、200㎎投与群、400㎎投与群及びプラセボ投与群の4群比較を行いました。6ヶ月間の二重盲検下での投与の後、全症例がOBP-601の400㎎投与に切り替えられてさらに6ヶ月間フォローアップされました。
③ OBP-601はPSP患者に対して安全に投与できることが示され、重篤な副作用としては意識消失(1例、100㎎群)が報告されました。
④ 神経組織の炎症を示すNfL(神経フィラメント軽鎖)の脊髄液中の濃度を、持続的に低下させました。
⑤ NfLと同様に、炎症性バイオマーカーである脊髄液中のIL-6(インターロイキン6)も同様の変化を示しました。
⑥ 日常動作スケール(PSPRS)ではOBP-601は症状の悪化を遅らせることが示唆されました。
⑦ 以上により、OBP-601は脳内のLINE-1を抑制することによって、炎症による脳神経損傷を抑制して、PSPの病態進展を抑制することが示唆されました。
現在トランスポゾン社は、第三者へのライセンスなどのビジネス活動と並行してPSPのPhase3臨床試験の開始に向けたEnd of Phase2 meetingを実施するなど、米国食品医薬品局(FDA)とPSPを対象にしたPhase3臨床試験の準備を具体的に進めています。なお、FDAはPSPに対して、2024年5月にOBP-601を迅速承認審査制度であるファストトラック品目に指定しています。
ii) ALS Phase2/3臨床試験
C9ALS/FTDを対象としたPhase2臨床試験は2022年1月に投与が開始されました。2023年3月に目標症例数の組入れが完了し、本試験を終了しました。現在までに試験を中止させるような安全性上の問題は報告されていません。トランスポゾン社は、2024年10月のNEALS(Northeast Amyotrophic Lateral Sclerosis Consortium)Meeting 2024年次総会や2024年12月のAnnual ALS Research SymposiumなどでALSに対するOBP-601の開発状況を発表しています。なお、本治験のALSに関する48週までの主な最終解析結果は下記の通りです。
① OBP-601投与群では、脊髄液中のNfL(神経フィラメント軽鎖)、NfH(同重鎖)、IL-6(インターロイキン6)を含む神経変性及び神経炎症の主要バイオマーカーを低下させました。
② ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)では、病勢進行の抑制効果が示唆されました。
③ C9-ALS患者の死亡率と相関する呼吸機能の客観的な指標である肺活量の低下率をプラセボ投与群と比較して約50%減少させました。
④ C9-ALS/FTD及びPSP(進行性核上性麻痺)におけるPhase2臨床試験を総合的に解析したメタアナリシスにおいて、OBP-601投与群で有意なNfL値の低下を示しました。
トランスポゾン社は、2025年1月にFDAとALSに関するEnd of Phase2 meetingを実施しました。また、上記の臨床試験結果が評価され、OBP-601はヒーリーALSプラットフォームに採択されました。トランスポゾン社は、ヒーリーALSプラットフォームを活用して、ALSを対象としたPhase2/3臨床試験を2025年に開始する計画です。
iii) アルツハイマー病Phase2臨床試験
現在トランスポゾン社は、PSPとALSのPhase2臨床試験の結果に基づいた以下の理由により、OBP-601をアルツハイマー病で展開するためにPhase2臨床試験の準備を進めています。
① OBP-601は、タウタンパク質の脳内蓄積に関連した病態であるPSPや、TDP-43タンパク質に関連した病態であるALSに対して有効性を示した。
② アルツハイマー病はタウタンパク質及びTDP-43タンパク質に関連した病態であることから、トランスポゾン社は、OBP-601が同様に炎症性神経変性を抑制し有効性を示す可能性があると考えています。
上記の臨床試験結果が評価され、Alzheimer's Drug Discovery Foundation(アルツハイマー病創薬財団、以下「ADDF」)からOBP-601がアルツハイマー病治療に対して有望であると判断され、トランスポゾン社はADDFから約5百万ドルの投資を受けることになりました。トランスポゾン社は、同資金を活用してアルツハイマー病に対するPhase2試験を2025年第4四半期に開始する計画です。
iv) AGS Phase2臨床試験
トランスポゾン社は、AGSという小頭症や高度な精神発達遅滞等を呈する遺伝性疾患を対象に、2023年7月にPhase2臨床試験の投与を欧州で開始しました。現在までに、本試験の中止を要するような安全性上の問題は報告されていませんが、トランスポゾン社はOBP-601の開発戦略を見直し、PSPやALSの許可取り試験やアルツハイマー病のPhase2試験の開始を優先するため、AGSの優先順位を引き下げています。
③次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702に関する活動
OBP-702は、強力な生体内がん抑制遺伝子p53をベクター内に搭載する新規腫瘍溶解ウイルスで、「がん遺伝子治療」と、OBP-301の持つ「腫瘍溶解作用」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つ第二世代のウイルス療法です。2025年3月に採択された国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金事業を活用して、岡山大学消化器腫瘍外科学 藤原俊義教授の研究グループにより、すい臓がんを対象とした医師主導治験の準備を進めています。既に、ゲムシタビン耐性すい臓癌細胞株のマウスモデルを用いた実験においては、PD-L1抗体を併用することでより強い抗腫瘍効果が確認されています。また、がん治療で問題となっているがん組織の間質系細胞(CAF : Cancer Associated Fibroblast)に対しても殺傷効果を示すことが示されており、今後、間質系細胞によって治療が困難と考えられているすい臓がんなどの難治性がんに対する新しい治療法として開発していくことが期待されます。
OBP-301の食道がんでの開発の経緯と同様に、岡山大学がOBP-702の臨床における安全性や用法を検討した後に、当社が臨床開発を引き継ぎ、OBP-301との棲み分けを考慮しながら開発を進めていく方針です。
④ウイルス感染症治療薬OBP-2011に関する活動
当社は、OBP-2011がヌクレオカプシド形成を阻害する新規メカニズムを有する化合物であることを実験結果から推定していますが、現段階ではその詳細なメカニズムは解明されていません。OBP-2011はすでに承認されているコロナ治療薬の主なメカニズムであるポリメラーゼ阻害やプロテアーゼ阻害とは異なるメカニズムであることが推察されており、コロナウイルスの様々な変異株に対して効果が左右されないというデータが得られています。しかし、新型コロナ治療薬の承認ハードルが上昇していること、並びに新型コロナ治療薬の複数上市による緊急性の低下などの外部環境の変化や、OBP-301の承認申請へ経営リソースを集中させるために、開発方針を見直す必要性が生じました。今後は、鹿児島大学と詳細なメカニズム解明を行った上でコロナウイルス以外のRNAウイルスに対する新規適応を検討していく考えです。
⑤がん検査薬OBP-401に関する活動
検査自動化プラットフォームの確立を目的に、OBP-401によって蛍光発光させた血液中で生きているがん細胞の画像学習を進め、AIによる自動判定を目指しています。しかし、画像学習に必要な多くの画像を取得することに、当初計画と比較して時間を要したため開発進捗は遅延しています。なお、OBP-301の承認申請へ経営リソースを集中させるため、優先順位を引き下げています。
⑥HDAC阻害剤OBP-801に関する活動
2009年にアステラス製薬株式会社から導入したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるOBP-801は、各種固形がんを対象とした米国でのPhase1臨床試験で用量制限毒性(DLT:Dose Limiting Toxicity)が発生し、推定有効量までの投与量の増量が不可能となったため、がん領域の開発を中断しました。
一方、新規適応領域である眼科領域では、京都府立医科大学眼科学教室の実験において、緑内障手術を行った際に形成される濾過胞の線維化抑制作用が認められ、2023年4月の日本眼科学会やARVO(視覚と眼科学研究協会学会)で研究結果が発表されました。また、2024年に日本国内で成立した眼科領域に対するOBP-801の用途特許について、2025年10月に同特許の保護範囲を拡張する旨の査定を受けました。なお、OBP-301の承認申請へ経営リソースを集中させるため、優先順位を引き下げています。
主なパイプラインの開発状況は、以下の通りです。